東急電鉄

MichiakiMatsuno

美しい時代へ、
走れ。

松野 倫明鉄道事業本部 運転車両部 計画課 兼 検修課 主事
2011年新卒入社 理工学 専攻 機械工学領域

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東急電鉄と東日本旅客鉄道(JR東日本)、さらには、相互直通運転を行う鉄道各社が協力して新型車両をつくる。同業各社との共同開発は、東急電鉄では前例がない。そんな、前代未聞のプロジェクトが始まった。

いくつかのテーマがあった。たとえばコストダウン。東急電鉄単独の発注ではなくなるため、ボリュームディスカウントが期待できる。たとえば保守性の向上。装置の共通化により、同業各社との情報交換もより密になる。だが、社内の反応はさまざまだった。「コストダウンや機能向上が実現していいじゃないか。」「これまで当社が培ってきたものをなくしていいのか。東急電鉄らしさを捨てるのか。」そもそも、わざわざ巨額の投資をしてまで、新型車両がいま必要なのかという議論もくすぶっている。

松野はさまざまな声に耳を傾けながら、社内外問わず、多くの協力のもと答えを導き出していった。中でも力を注いだひとつがWiMAX通信で地上と車両をつなぐネットワーク化だ。障害発生時に車両の状況を迅速に把握することで、輸送の安定化につなげるほか、動画広告のリアルタイム性が向上し、広告収益の拡大に寄与する。さらに数千項目にも及ぶ車両の動作状態や搭載機器などのビッグデータ蓄積も可能となり、将来的なメンテナンスフリー化や故障の未然防止を目指す。そして、共通化した車両を採用する同業各社において、メンテナンスフリー化や故障の未然防止等の情報を共有することで、鉄道業界における将来的な取り組みの深度化と加速化に繋げていく。

一方、デザインには「東急電鉄らしさ」を詰め込むことになった。車両の基本仕様は、コストダウンや保守性の向上などを目的に同業各社と共通化。しかしデザインや騒音対策など、お客さまサービスに直結する仕様は独自性を追求した。めざすは、「美しい時代へ」というスローガンを掲げる東急グループらしい、「美しい車両」。デザインは、車両づくりでは一般的な車両メーカーでも工業デザイナーでもなく、沿線の商業施設の空間デザインなどを手がける会社に依頼した。東急電鉄のDNAは街づくり。街になじむデザインは、街づくりのノウハウから生まれるという発想。その結果、柔らかなフォルムと特徴的な白を持ち、トンネル内に起きる風までも軽減した、あらゆる点で美しい車両が完成した。

企画から足かけ5年。2018年3月、「2020系」と名付けられた新型車両が、ついに田園都市線を走り始めた。2018年なのに「2020」?そこには、2020年に東京の顔になってほしいという願いと、2022年に100周年を迎える東急電鉄の、新しいシンボルとしての期待が込められている。

車両はおよそ40年使い続けられる。「私の方が先に定年します」。松野はそう言って笑う。いまは車両開発の第一線から、運転や車両に関する業務を軸に、鉄道各部門の橋渡しを行う部署へと移った。だが、SNSなどで2020系の評判をチェックしては、ホッとしたり、励まされたり。けれどいちばんうれしい瞬間は、2020系のオモチャを抱きしめて眠っている、2歳のわが子の寝顔をのぞく時、かもしれない。

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