若手イノベーター座談会 ここでしかつくれない、次の100年へ。

フューチャー・デザイン・ラボ。それは、「東急、次の100年を創る」をミッションに、社会やお客さまの生活を変えるイノベーションに取り組む部署。そこに所属する3名の社員をご紹介します。社内起業家育成制度を利用して、社内ベンチャーを立ち上げた人。2050年に向けたビジョン浸透のために模索を続ける人。社外スタートアップとの共創を仕掛ける人。彼らの取り組みや想いから、未来のかけらを見つけてください。

片山 幹健
フューチャー・デザイン・ラボ
ROADCAST プロジェクトリーダー
2013年入社
東北旅行中に被災したことをきっかけに、学生時代を通じて東日本大震災の復興支援プロジェクトにリーダーとして参加。自身のアイデアと、企業の持つリソースを組み合わせて暮らしに貢献したことから、幅広いジャンルのリソースを持つ東急株式会社に入社。
多田 仁美
社長室 総務グループ 秘書担当
兼 フューチャー・デザイン・ラボ 主事
2014年入社
家族の転勤に伴ってさまざまな街に暮らす中で、商業施設ができるたびに人の流れや活気が変わることを知り、街づくりに興味を持つ。デベロッパーや鉄道会社を中心に就職活動を行う中、特に事業領域の広い東急株式会社に面白さを感じ、志望する。
武居 隼人
フューチャー・デザイン・ラボ
2016年入社
学生時代、高齢の部活OBの自宅クリーニングを手伝ったことから、ホームサービスにビジネスチャンスを見出す。が、東急株式会社がすでにそのジャンルを確立していることを知る。それをきっかけに、東急株式会社が展開する幅広い事業に興味を持つ。

経験の掛け算から生まれた、
アートウォール広告。

片山:僕は「ROADCAST」というアートウォール広告事業を手がけています。ビルの空き壁をオーナーさんからお預かりし、企業のプロモーションや屋外型のアート展に活用して、広告収入を得るビジネスモデルです。ビルオーナーさんには広告収入がシェアされるほか、壁の落書きが減るというメリットがある。出稿企業は、街全体を使ってサービスの世界観や体験価値を伝え、ユーザーに強くアプローチできる。そしてもちろん、街の賑わい創出にもつながります。

多田:ROADCASTは、社内起業家育成制度(※1)を使って始めたんですよね。

片山:そうです。さかのぼると、屋外広告を手がけるグループ会社に出向したことがアイデアのきっかけでした。屋外広告を組み込んだプロモーションのニーズが高かったので、街のちょっとした空きスペースも活用できないかな、と。一方で屋外広告には、内容によっては景観を損なうなど「街の嫌われ者」という側面もある。そのあたりをちゃんと解決して、街に貢献するものにしなければ大きな展開は見込めないだろうとも考えていました。そこで参考にしたのが、これも出向先であるリゾート事業で知ったウォールアートです。ニューヨークのブルックリンやロンドンのショーディッチでは、ウォールアートによって落書き対策と街の魅力向上を実現している。その要素を取り入れることで、「ROADCAST」の形ができあがりました。

武居:これまでの経験を掛け合わせることで、新しい事業のアイデアが生まれたんですね。

片山:入社してから立て続けに出向を経験しているんですが、最初が広告事業で、その次が会員制リゾート事業。まったく関連がなくて、ほとんど異業種への転職みたいなものです(笑)。でも、それぞれの要素を掛け合わせることでROADCASTにたどりつけた。これは東急株式会社らしいメリットですね。ひとつの事業しか知らなかったとしたら、その延長線上で新しい発想に至るのはきっと難しいはず。でも東急株式会社なら、ものすごく幅の広い事業をローテーションで経験できるからこそ、既存の枠をはみ出すような視点を持ちやすい。しかも、社内起業家育成制度のように、後押しする環境も整っています。

社内起業家育成制度

部署や年齢、役職に関わらず、誰もが新規事業を提案できる制度。採用されれば発案者自身がプロジェクトリーダーに就任することができ、これまでに会員制シェアオフィス「NewWork」、翻訳・ローカライズサービス「YaQcel」、東急線券売機でのキャッシュアウト(銀行預金引き出し)サービスなどが事業化されている。片山は4回目の挑戦で「ROADCAST」が採用された。

ROADCAST

多田:社内ベンチャーとして事業を手がけることのよさってなんでしょう?

片山:経理システムだったり法務部門だったり、東急株式会社の社内リソースを使えるのは大きいですね。それに、ビルオーナーさんとの関係性がまだ薄い、事業の立ち上げ直後にも助けられました。アートウォール広告といっても理解されなくて、「変な看板を付けに来たんだろう」くらいにあしらわれてしまうんですね(笑)。そもそも壁を貸してもらわなければ事業ができないところに、東急グループが持つビルの壁を提供してもらったり、すでにお付き合いのあるビルオーナーさんの紹介を受けたりしました。

武居:確かにゼロからベンチャーを立ち上げると、そのあたりは誰にも頼れないですね。

片山:一方で、社内事業でありながら立場は独立しているんです。独立採算制だし、メンバーも僕が面接して新たに採用しています。東急株式会社が「投資する側」、僕たちが「投資される側」というイメージですね。事業戦略を立案する時もそうです。「東急株式会社とのシナジーを意識しなきゃダメだよな」と思っていたんですが、上司からは「ROADCAST事業がどれだけ成長できるか、まずはそれだけを考えればいい」と。最初こそ東急株式会社らしく渋谷で立ち上がったROADCASTですが、実は銀座や新宿、港区へとエリアを広げ始めています。

多田:東急線の沿線ではないんですね。

片山:冷静にROADCASTの成長を考えて、まずは広告価値の高い街でキャッシュフローを回していくことを優先しました。東急株式会社とのシナジーを本格的に描いていくのは、また次の段階になると思います。こういう判断が許されるのはちょっと意外でしたけど、新しい事業を成功させることにそれだけ本気なんだなと感じました。

ビジョン浸透のための、
秘書と編集長の兼任。

多田:ソーシャル経済メディア「NewsPicks」東急グループ版の編集長をしています。もともと私が所属する「2050プロジェクトチーム」には、長期経営構想の中で発表された「TOKYU 2050 VISION 世界が憧れる街づくり」を、社内に浸透させていくというミッションがありました。その一環として「事業構想コンテスト」や「東急フューチャーサミット」などの取り組みを重ねてきたんですが、正直なところ、いまひとつ手応えがなかったんです。特に、若手社員の参加率が低いのが気がかりでした。原因を突き詰めた時に、そもそも私たちがやりたいことが何なのか、ちゃんと伝えてこなかったなという反省があって。そこで、社内に向けた発信メディアとして、NewsPicksの東急グループ版を導入することになりました。

片山:すでに社長室の秘書という業務があって、さらに編集長に抜擢されたんですよね。「トップが考えていることを、NewsPicksを通じて若手に浸透させてほしい」という狙いなんでしょうか。

多田:それはあると思いますし、私自身も意識しています。実際に若手からは、「社長が何を考えているのか知りたい」「具体的に何をすればいいのか、ビジョンを実務に落とし込んで教えてほしい」という意見も多いんです。日々の業務に限っていえば、ビジョンを理解していなくても回ってしまうかもしれません。でも、将来を考えるとそれではいけない。2050年に経営の中心にいるのは、今の若手社員ですから。

片山:NewsPicksは情報収集ツールとしても優秀ですよね。ついさっきも、コロナ禍の渋谷がどんな状況にあるかを取り上げた記事を読んでいました。このテーマでまとまった情報が意外となかったので、興味深かったですね。

武居:東急株式会社は事業が幅広いだけに、ほかの事業部が何をしているのかわかりにくいことがある。NewsPicksを通じて、それが把握できるので重宝しています。

多田:おかげさまで、社内の関心もとても高いんです。まずは半年間、300名限定で始めたんですが、モニターを社内公募したらあっという間に枠が埋まってしまいました。週間アクティブユーザー数も70〜80%と、他社さんに比べてはるかに高い水準で推移しています。こういう情報提供の場をみんなが求めていたのかもしれませんね。長期経営構想の理解度も87%にまで上昇しました。

片山:編集長の手腕ですね。

多田:もともとは「お飾り編集長」のつもりだったんですが、そういうわけにもいかなくて(笑)。でも、すごく気合いは入っています。記事の制作はNewsPicksに一任することもできるんですが、私たちはテーマ選びから人選、取材への同席まで、できるだけ深く関わっていますし、若手社員へのアンケートなどを通じて、さらなる内容の充実を図ってもいます。一方で、課題もいくつか見えてきました。特に解消したいなと思っているのが、発信者が固定され始めているところ。コミュニティ施策なので、できるだけ多くの人を巻き込みたいんですが……。いちばんの理想は、こちらから発信を依頼しなくても「取り上げてほしい」という立候補が次々に寄せられる状態だと思います。どうやってそれを実現するか、いろいろと試していきたいですね。

オープンイノベーションを仕掛け、
その実現に立ち会う。

東急アクセラレートプログラム

スタートアップの支援を通じて産業の新陳代謝を促進するとともに、東急グループの事業に変革を起こすことを目的としたプログラム。東急グループのリソースを用いてスタートアップが持つサービスやプロダクトの仮説検証を行い、東急線沿線に新たな価値を創出するほか、渋谷を中心にスタートアップの持続的な成長を支える「イノベーションエコシステム」の構築を目指している。

東急アクセラレートプログラム

武居:僕が運営を担当している「東急アクセラレートプログラム(TAP)(※2)」は、スタートアップなど社外のパートナーとのオープンイノベーションを推進する取り組みです。僕たちから発掘するか、またはサイトを通じてアプローチしてくるスタートアップと、TAPに参画している東急グループ27事業者を引き合わせ、共創を仕掛けていく役割ですね。大きな目的は2つあって、ひとつは東急グループの事業変革を進めること。もうひとつは、東急線沿線でスタートアップが育つことによって、街そのもののブランディングになったり、オフィス需要が活発化したりといった、街づくりとしての効果が見込めること。さらに副次的な効果として、いわゆる「イノベーティブ・マインド」の醸成があります。イノベーティブ・マインドを育てるには、内側はもちろん、外部からも刺激を受けることがとても大切。イノベーティブ・マインドのかたまりのようなスタートアップと接点を持つことで、東急グループの人材育成にも役立つのではないかという狙いがあります。

多田:いま、いくつくらいの共創案件が動いているんですか?

武居:自分でも「何件あるのかな」と思っていたんですけど、もうわからないくらい動いています(笑)。全部が全部、アクティブな状態というわけではありませんが、たとえばサイトだけに限っても、月に10から20件のアプローチがあって。東急グループはこの種のプログラムに着手するのが比較的早かったので、スタートアップ側にも「東急グループと組んで、うまくいけば事業をスケールさせることができる」という共通認識があるみたいです。ただ、数が多い分「ひとつひとつの案件にどこまで寄り添えるのか」という僕自身の課題もあります。最後まで見届けることはそもそも難しくても、せめてスタートアップと東急グループの事業者が「どんな将来図を描くのか」「その実現に向けて、どんな一歩目を踏み出すべきなのか」という目線合わせまでは立ち合いたいですから。

片山:27事業者が参画していて、多くのスタートアップがあって、情報量がすごいですね。

武居:こんなにたくさんの事業を見るとは思いませんでした(笑)。それぞれの事業がいま、何を目指しているのかを把握するために、緻密なコミュニケーションを心がけています。スタートアップに対してもそれは同じですね。どんな強みがあるのか、深い情報をちゃんとつかんでおくことで初めて、精度の高い引き合わせができるようになります。

片山:運営側として、いちばん達成感を感じるポイントはどこですか?

武居:共創が形になった時。これに尽きますね。最近では、東急百貨店へのデリバリーサービス導入が印象に残っています。小売業を取り巻く環境が厳しくなる中、東急百貨店はもともと変革に積極的でした。そこにコロナ禍が重なり、一刻も早く手を打ちたい状況に追い込まれたんです。ちょうどそのタイミングで検討中だったのが、フードデリバリーマッチングアプリ「Chompy」の運営企業からのアプローチ。そこからロンチまでは早かったですね。本格的に打ち合わせを始めて3か月後には、「Chompy」内で「東急フードショーエッジ」のデパ地下グルメが買えるようになっていました。アプリを開いてそれを確認できた瞬間は、感慨深かったです。

東急株式会社で、
イノベーションに挑むということ。

武居:こんなふうに新規事業や変革を切り出すとそればかりが目立ってしまうかもしれませんが、じつは新しいことって、東急株式会社にはあふれていると思うんです。たとえば不動産事業を取り上げてみても、再開発や出店は常に動いていますよね。それと同じで、どんな事業においても、新たにやり始めていることが必ずある。

片山:その通りだと思います。「この事業の、ここがちょっと足りないよね」というのが見つかれば、「じゃあ、すぐにやろう」と動き出す会社ですから。それを楽しめる、好奇心の強い人に向いているのかもしれません。もちろん、完全なスタートアップのように「とにかくやってみよう、ミスってもしょうがないから」とはいかない。ROADCASTをやっていても、やっぱり社外からは「東急さん」と呼ばれますし、東急株式会社として果たすべき責任のレベルはとても高いと思います。好奇心と、守るべきことを守れる視野の広さ。その両立が大切なんでしょうね。

多田:私は就活の時、街づくりに興味はあるけれどやりたいことがひとつに絞りきれなくて、いろいろできそうな東急株式会社に入社したんです。まさか、秘書と編集長を兼任することになるとは思いませんでしたけど(笑)。社内転職と言ってもいいほどジャンルが変わる異動は珍しくありませんが、それを楽しめたほうがいいですよね。事業領域の幅広さと、リソースやノウハウの豊富さという、東急株式会社の利点を味わう機会ですから。

片山:たとえば、「どうしても最初から社長という肩書きで、ゼロから世界と勝負したいんだ」という人にとっては回り道かもしれません。でも、さまざまな事業を経験しながらビジネススキルを磨いた上で、新規事業へとステップアップするにはとてもいい会社だと思います。既存事業でも常に何らかの立ち上げが進んでいますし、やりたいことの道筋が定まれば、そこに向かって突き進める制度と環境が整っていますから。

武居:東急株式会社の役割をひとことで言うと「企画屋さん」だと思うんです。いくつもの手段から最適なものを選び取ったり、何かと何かをコラボさせて新しいものを生み出したり。だとすると、インプットの幅が広ければ広いほど、いいアウトプットにつながっていくはず。そういう意味でも、成果を出すためのいい経験ができる会社だと思いますね。

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